手折られる、未来。


これが貴方なら良い、と。
何度、そう願っても。
叶えられることは、ない。


過去に、纏わり付かれている。
この可能性を考えたことは、なかった。
先に見付ける、何時も。
逃げも隠れもしない、けれど。


もう一度、と。
そう、何度、夢想しただろう。
重ねて、重ねた。
愚かな私は、愚かなことに、繰り返したがる。


本を、置いてきた。
その人が、その意味を知ることはないと、知りながら。
復讐されている?
否、これは。


連絡先は、残っていない。
現在の私が、消したから。
それは、先見の明、だったろう。


初めて、を、喪っていく。
葬っては、哀しみを嗤う。
これが、貴方なら、良い。
けれど、それは、叶わない。


これ以上、醜くならぬよう。
そればかりを、ただ、思った。
縁か、業か、誰が知ろう。


だから、ほら。
初めましてと、微笑んで。



08/20 13:27 | 硝子の宝箱 | CM:0
誰も、此処には居ないから。


手紙を書けずにいる間に、貴方は私を忘れるだろう。
生活は、続いていく。
其処に、私は、関係が、無い。

逢いに行き、目の前に立ち、跪き。
告解するかの如く、囁かねばならないのだと。
それしか証明することは出来ないのだと、声がする。
踏み越えてはならぬ線を越えること。
それ以外に、何ら求められてはいないのだと。

けれど、結局。
それを実際行うことを、求められては、いないと云うこと。
そのことを、忘れてはならない。
絶対、に。




身体を、脱ぎ捨ててしまいたい。
けれど、貴方に触れられたい。
この醜い身体では、厭と思う。
けれど、この身体無しでは、生きていかれない。

貴方の瞳が、見たいと思う。
その声が、聴きたいと。
その手に触れて、みたいのだと。
嗚呼、早くしなければ。
貴方は、私を、忘れてしまう。




貴方は、何処にいるのだろう。
逢いたい。
けれど、それには。

貴方が私を忘れてしまう、そのことは、決して悲しいことではない。
寧ろ、望ましいことだろう。
ただ、ただ、そう、ただ。
私が、貴方を望んでいる、ただ、それだけが、この感情の理由だろう。
意味の無い、欲望だけの、我儘な。

落ちて、堕ちて、愚かしさの底辺で。
それでも尚、手を伸べることの意味を、貴方はきっと、知らなくて良い。
私だけが、身を以って知る。
変わらぬ呪いは、忘却を殺す。
永遠の果ては、記憶の消去。
そして、現在の刹那すら。




暗い、冥い、闇い部屋。
椅子に、鎖で繋がれている。
窓には月しか見えないのに。
雨が、ずっと、降り続けている。

どうか、名前を、呼んで欲しい。
貴方の、声で。
私の、名前を。





08/08 13:34 | 宛名の無い手紙 | CM:0
この想いの名を、知っているなら。



貴方を理解する者が、どれ程、居るだろう。
私は、その大勢の中のひとり、だろうか。
それとも。


愚かな夢は、現実に歪んだ姿で立ち現れる。
願望と、欲望。
貴方の望みを、誰が叶える。


手紙を書くことが、出来ないままでいる。
貴方は、私を忘れてしまうだろう。
求めねば、消えてしまう。


貴方の姿を、見たい。
貴方の体温を、知りたい。
けれど、それは、とても、怖い。


喪失ほど、確信に満ちたものはなく。
忘却ほど、親しみのあるものはない。
私には、得られぬもの。


呼ばれぬ名を持つ意味はなく。
この名はただの記号になろう。
貴方に呼ばれたときにだけ、立ち現れるものとして。


淋しい、等と言ってはいけない。
それは、私が招いたもので。
生涯、背負うものなのだから。





08/04 17:15 | 宛名の無い手紙 | CM:0
つら、つらと。


何度も、開いて。
指で、辿る。
唇から零れ落ちるものを、知らない。
その意味も、失われたものも、何も。


乾いてしまう前に、潤したい。
けれど、涙は何処にも無い。
人の手で作られたものは、果たして優しいか。


手首を掴まれる幻覚に、悩まされる悦楽。
自然に在るものだけが、美しいと云うのなら。
貴方の思う美は、何処に。


言葉が欠けて、手紙が書けない。
これでは何も、届かない。
そして、何も、叶わない。


何度も、開いて。
指で、辿る。
名前を呼んで、囁いて。
ずっと、終わらないでいて。




07/27 16:03 | 宛名の無い手紙 | CM:0
茨の中で。


精神を拘束されれば、身体が溶ける。
貴方の熱は、炎か、氷か。
待ち望んでしまう、そのことに、嘘は吐けない。
焼いて、灼いて、溺れさせて。


耳が疼いて、空虚を囁く。
貴方のかたちが知りたいと、指先が彷徨う。
その熱が欲しいと、皮膚がさざめく。
足りない、と、唇だけが、そっと泣く。


足ることを知らない欲望は、罪に似る。
罰すら喰らう、幻を飼う。
この身体を、粗末にしてしまう前に。
もう少し、もう少しだけ。


貴方にしか出来ないやり方で、塗り潰して欲しいのだと。
結局、それだけを伝えていたのだろう。
それが、真実、美しいのなら。
私は、迷わず、魂を、差し出してしまうのだろうから。


恋が叶う月、と云った。
そんな可愛い想いは、知らない。
暗い場所で、這わせた蔦を、絡め取る。
枯れた薔薇の、花弁が朽ちる。




06/29 15:53 | 宛名の無い手紙 | CM:0
template design by takamu
Copyright © 2006 緋褪 -hisame- All Rights Reserved