一人、独りで。


雨音に、貴方を重ねて思い出す。
遠くの約束が、近く感ぜられる。
その輪郭を撫でようと、指先を伸ばす。
記憶の何処を探しても、その姿は、見えないのに。


貴方に触れたいと、思う。
願いと欲を、押し殺す。
貴方に逢いたいと、思う。
私が出来ること等、何も、何も、何も無い。


言葉が途切れて、肌が狂ってしまった。
瞳と耳が入れ替り、片目だけが泣いている。
乾き切った唇が、渇き切った声を壊す。
雨の雫に、届かない。


手繰り寄せた祈りの糸と、小さく脆い真実の欠片。
貴方も、通り過ぎてしまうのだろうか。
同じ、ひとつの裏表。
貴方の為に心から望みながら、私の心はそれを決して望まない。


自身の気持ちよりも大切なものを、知っている。
私は、祈り、祈るだろう。
片目の醜女と成り果てたとて、雨に触れられぬとて。
罪と、罰を、手に、背に、受けて。



09/15 13:23 | 重ねる言の葉 | CM:0
切実なる、矛盾の焦燥。



感覚が、麻痺している。
指先に触れるものが、よく見えない。
抱き寄せる腕が、判らない。


言葉が、形を失っていく。
怖いのは、貴方がいなくなってしまうこと。
存在理由が、壊れて、消える。


厭わしい季節が、貴方を苦しめる、幻覚。
貴方の好きな季節に、なって欲しい。
私の、最も、愛する季節。


貴方に触れられる、夢を見る。
現に、その為の時間が必要と知る。
早く、早く、早くしなくては。


出逢う迄に、感覚を、戻さなくては。
泣いても涙が出ない、ままではいけないと。
次が最後の覚悟で、いつも。


貴方の名前を、そっと、呼ぶ。
忘れることは、ないだろう。
全ての感覚を失くしても、貴方の記憶、それだけは。




08/21 15:46 | 赤い月 | CM:0
手折られる、未来。


これが貴方なら良い、と。
何度、そう願っても。
叶えられることは、ない。


過去に、纏わり付かれている。
この可能性を考えたことは、なかった。
先に見付ける、何時も。
逃げも隠れもしない、けれど。


もう一度、と。
そう、何度、夢想しただろう。
重ねて、重ねた。
愚かな私は、愚かなことに、繰り返したがる。


本を、置いてきた。
その人が、その意味を知ることはないと、知りながら。
復讐されている?
否、これは。


連絡先は、残っていない。
現在の私が、消したから。
それは、先見の明、だったろう。


初めて、を、喪っていく。
葬っては、哀しみを嗤う。
これが、貴方なら、良い。
けれど、それは、叶わない。


これ以上、醜くならぬよう。
そればかりを、ただ、思った。
縁か、業か、誰が知ろう。


だから、ほら。
初めましてと、微笑んで。



08/20 13:27 | 硝子の宝箱 | CM:0
誰も、此処には居ないから。


手紙を書けずにいる間に、貴方は私を忘れるだろう。
生活は、続いていく。
其処に、私は、関係が、無い。

逢いに行き、目の前に立ち、跪き。
告解するかの如く、囁かねばならないのだと。
それしか証明することは出来ないのだと、声がする。
踏み越えてはならぬ線を越えること。
それ以外に、何ら求められてはいないのだと。

けれど、結局。
それを実際行うことを、求められては、いないと云うこと。
そのことを、忘れてはならない。
絶対、に。




身体を、脱ぎ捨ててしまいたい。
けれど、貴方に触れられたい。
この醜い身体では、厭と思う。
けれど、この身体無しでは、生きていかれない。

貴方の瞳が、見たいと思う。
その声が、聴きたいと。
その手に触れて、みたいのだと。
嗚呼、早くしなければ。
貴方は、私を、忘れてしまう。




貴方は、何処にいるのだろう。
逢いたい。
けれど、それには。

貴方が私を忘れてしまう、そのことは、決して悲しいことではない。
寧ろ、望ましいことだろう。
ただ、ただ、そう、ただ。
私が、貴方を望んでいる、ただ、それだけが、この感情の理由だろう。
意味の無い、欲望だけの、我儘な。

落ちて、堕ちて、愚かしさの底辺で。
それでも尚、手を伸べることの意味を、貴方はきっと、知らなくて良い。
私だけが、身を以って知る。
変わらぬ呪いは、忘却を殺す。
永遠の果ては、記憶の消去。
そして、現在の刹那すら。




暗い、冥い、闇い部屋。
椅子に、鎖で繋がれている。
窓には月しか見えないのに。
雨が、ずっと、降り続けている。

どうか、名前を、呼んで欲しい。
貴方の、声で。
私の、名前を。





08/08 13:34 | 宛名の無い手紙 | CM:0
この想いの名を、知っているなら。



貴方を理解する者が、どれ程、居るだろう。
私は、その大勢の中のひとり、だろうか。
それとも。


愚かな夢は、現実に歪んだ姿で立ち現れる。
願望と、欲望。
貴方の望みを、誰が叶える。


手紙を書くことが、出来ないままでいる。
貴方は、私を忘れてしまうだろう。
求めねば、消えてしまう。


貴方の姿を、見たい。
貴方の体温を、知りたい。
けれど、それは、とても、怖い。


喪失ほど、確信に満ちたものはなく。
忘却ほど、親しみのあるものはない。
私には、得られぬもの。


呼ばれぬ名を持つ意味はなく。
この名はただの記号になろう。
貴方に呼ばれたときにだけ、立ち現れるものとして。


淋しい、等と言ってはいけない。
それは、私が招いたもので。
生涯、背負うものなのだから。





08/04 17:15 | 宛名の無い手紙 | CM:0
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