紅一滴で、封をして。


小さく囁いた声は、届かないまま消えてしまう。
私には、聖夜も、新年も、無かったのだと。
羨望の眼差しで、一片の雪を追う。


押さえ付ける手を、力強い腕を。
繊細な指先を、創造される世界を、夢に見た。
初の夢は、濁流に別れ、喪失と混沌、だと云うのに。


摑まれる為に伸ばしながら、撫でられたいと思う。
希いながら嘯き、望みながら口を閉ざす。
これが罪か、それとも罰か、それとも単なる欺瞞と言うか。


貴方に手紙を送る理由と自由を、丹念に潰していくような日々。
貴方が私を忘れたのだと、痛感する迄続く日々。
丁寧に生きることは、つまり。


貴方と出逢い、何年、過ぎたことだろう。
冷たい空気が肌を裂いても、貴方が名前を呼ぶのなら。
春を、欲してくれるのならば、愛する季節に、約束を。




01/07 13:16 | 宛名の無い手紙 | CM:0
枯れ朽ち褪せる、風の色には。


手紙を書こうとする、日々。
言葉が散った空白だけが、目の前に広がる。
感情を載せる方法を、失っている。
否、感情しかないから、言葉が意味を失っている。


己の言葉は、届かぬ限り、想いの屍。
貴方の言葉は、そうではない。
何故なら、私が聴いている、から。


愛すべき季節に、何故、涙すら思い出せずにいるのだろう。
移ろう景色が、ただ、色褪せる。
今宵も月の雫が、ほら。




貴方は私を忘れてしまう。
それを、ほら。
哀しむことは、何もない。




10/25 10:09 | 宛名の無い手紙 | CM:0
月を、探せど。



罪を数えることは、雨粒を数えるのと同じ。


その大きさを推し量ることは、夜闇の奥を覗くこと。


熱が燻り、指先が迷う。


貴方の言葉の名残を探せど、辿る先には何も無い。


届かないまま時は止まり、身体と精神がずれていく。


欲しいものは、与えられない。


唇を伝う、夢の向こう側は、虚無。


涙が流れぬ呪いも朽ちれば、忘却の傍で、熱が、泣く。




09/25 14:55 | 散らす花弁 | CM:0
一人、独りで。


雨音に、貴方を重ねて思い出す。
遠くの約束が、近く感ぜられる。
その輪郭を撫でようと、指先を伸ばす。
記憶の何処を探しても、その姿は、見えないのに。


貴方に触れたいと、思う。
願いと欲を、押し殺す。
貴方に逢いたいと、思う。
私が出来ること等、何も、何も、何も無い。


言葉が途切れて、肌が狂ってしまった。
瞳と耳が入れ替り、片目だけが泣いている。
乾き切った唇が、渇き切った声を壊す。
雨の雫に、届かない。


手繰り寄せた祈りの糸と、小さく脆い真実の欠片。
貴方も、通り過ぎてしまうのだろうか。
同じ、ひとつの裏表。
貴方の為に心から望みながら、私の心はそれを決して望まない。


自身の気持ちよりも大切なものを、知っている。
私は、祈り、祈るだろう。
片目の醜女と成り果てたとて、雨に触れられぬとて。
罪と、罰を、手に、背に、受けて。



09/15 13:23 | 重ねる言の葉 | CM:0
切実なる、矛盾の焦燥。



感覚が、麻痺している。
指先に触れるものが、よく見えない。
抱き寄せる腕が、判らない。


言葉が、形を失っていく。
怖いのは、貴方がいなくなってしまうこと。
存在理由が、壊れて、消える。


厭わしい季節が、貴方を苦しめる、幻覚。
貴方の好きな季節に、なって欲しい。
私の、最も、愛する季節。


貴方に触れられる、夢を見る。
現に、その為の時間が必要と知る。
早く、早く、早くしなくては。


出逢う迄に、感覚を、戻さなくては。
泣いても涙が出ない、ままではいけないと。
次が最後の覚悟で、いつも。


貴方の名前を、そっと、呼ぶ。
忘れることは、ないだろう。
全ての感覚を失くしても、貴方の記憶、それだけは。




08/21 15:46 | 赤い月 | CM:0
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