蔭を持つ、だからこそ。


舐め合う傷なら、要らない。
途切れる歌なら、聴かない。
尽きた涙なら、掬い上げよう。
その声を、その声を。


夢に見る、雨の夜。
陽射しが壊す、淡い幻。
想い出ならば、手首に刻んだ。
何度でも、何度でも。


前を、向くのなら。
歩き出すのなら。
背を、押そう。
必要ならば、支えよう。


その瞳の、捉えるもの。
その耳の、拾うもの。
その手が求め、触れるもの。
祝福を、そして、祈りを。


通り過ぎる、貴方を。
私を忘れ去る、約束を。
慈しんでは、愛おしむ。
私は想い、希う。


貴方が生きて、いくように。




05/30 14:14 | 宛名の無い手紙 | CM:0
望月を乞う。


一瞬で、返ってくる言葉。
全てを、理解して。
短い言葉に、沢山の意味と、余韻を含ませて。

そのひとの言葉は、甘い毒が滴っている。
だから、沢山のひとを、惹き付ける。
そして、その毒を、毒と知るひとは、いない。



冷たく、細い鎖。
繊細な音を立てて、月の光を映し込む。
闇の中、たったひとつの、光の元。

並べ立てた言葉の中から、す、と真意を抜き取って見せる。
非凡な才の為せる業。
それ以上のひとを、私は、知らない。



己を卑下するのでなく、有りの儘。
尚且つ、私の未熟さ、拙さを受け止めて。
そして、その上で、本当の言葉を、くれる。

一瞬で、返ってくる言葉。
全てを、理解して。
これ以上は、望んでは、いけない。



沢山のひとが、望むだろう。
私は其処に、属していない。
祈り、願い、想うだけ。

毒と知りつつ口にした。
ゆっくり死んでいく過程は、月が欠けていくようで。
美しく満ちた月、ただそれだけを、最後に一度、見たかった。




05/29 14:52 | 赤い月 | CM:0
愛すべき。


拒絶を、するだろう。
そう、幾ら理解をしていても、手を伸ばそうとしてしまう。
誰も助けてくれない、と。
貴方の言葉が、胸に刺さる。
画面の文字が、泣いている。


それで、救われやしないと、知っている。
それでも、抱き締めたいと、思う。
決して短くはない、間。
幾度も、幾度も、祈り、願った。
それでも私は、虚構の住人でしかないだろう。


月を、見上げた。
私にとっては、現の方が虚構だった。
闇の中に手首を浸した。
貴方の言葉は、とても、リアルだった。
少なくとも、私にとっては。


退廃の夢。
排他の行方。
写真の欠片。
遠くの貴方。
こんなに、大切、なのに。


己の醜悪さに、伸ばした手を下ろす。
ただ、祈り、願う。
貴方に、貴方の望む手が、与えられますように。
貴方の傍に、誰かが。
貴方を認め、愛しますように、と。


現の壁と、残された真。
行き場の無い手が、何を言う。
貴方が、いつか。
微笑んで、いてくれるのならば。
私は、ただ、それだけで。




05/27 13:33 | 硝子の宝箱 | CM:0
唯一無二の。


表面を撫でる、「感じの良さ」。
虚ろな笑顔と、光の無い瞳。

待ち望む、本当の、声。
例えそれが、この身を滅ぼすものであっても。



『 君には、解らない 』
遥か昔の、悲痛な響きが折り重なる。

『 何でもない、普通の僕のことなんて 』
それでも、貴方は、私より遥かに、特別、だった。



時は、過ぎて。
穏やかな顔で微笑む貴方は、今や、私の手を引くことすら出来る。

美しい音色が零れて、悲哀を抱いて優しく撫でる。
本当の声でしか、もう、話せないのだと。



『 憎みすら、したんだ。
 それでも君が正しいのだと、何処かで知っていたんだ 』

『 普通の男は、逃げ出すだろう。
 くだらないプライドに固執する輩に、傷付いてはいけないよ 』



彼は、人だった。
そして大人の男性になり、人を愛することを知る。

それでも私は、待ち望んだ。
例えそれが、私を殺すものであっても、貴方の声が、聴きたかった。





05/27 10:39 | 白い月 | CM:0
終わりだけが見えているから。


途切れ途切れの雨音が、記憶を刻む。
淡く、淡く、消えて行ってしまう。

意味の無い場所で、意味の無い行為を重ねている。
それは、現実には価値のあるものの為。
それは、全く以って、私の為にはならない。

それでも、と、立ち止まる。
君を、がっかりさせてやりたくは、ない。



場所の歪み、空気の濁り。
この手に出来るもの、守れるもの、抱けるもの。

何を捨てて、何を選ぶ。
意志を持ち手を伸ばす行為と、その代償。
それも、現実には、私の為になるのだろう。

背を押されたような気がして、歩き出す。
淡く微かな記憶の余韻が、静かな視線と混ざり合う。



雨音の、リズムと旋律。
終わりだけが、くっきりとして近くに在る。

其処で培ったものは、全て、あげよう。
全て、全て、君にあげよう。
それまでに、得られるだけ、得なくては。

君に、強さが在るのは知っている。
けれど、もっと、上へ、前へ進めるように。
私は、ただ、それだけを。




05/26 15:58 | 硝子の宝箱 | CM:0
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